電磁波の基本のき
電磁波は電界と磁界を伴う波動。速度 c、周波数 f、波長 λ の関係は、
c=fλ
電磁波のスペクトルを周波数が低い方から並べると、電波 → 赤外線 → 可視光線 → 紫外線 → X線。電波の定義は3005 MHz以下の電磁波(ただし定義は文脈で変わるんだよね)。
伝送線路の電圧や電流を表す式に現れる e−jβz は、z 軸の正方向に v=ω/β で伝搬するひとつの波を表している。e−αz の α は単位長あたりの減衰を意味する。
位相定数 β は単位長あたりの位相回転で、波長との関係は β=2π/λ。
構成方程式
電磁波を記述する物理量として、電界 E [V/m]、電束密度 D [C/m²]、磁界 H [A/m]、磁束密度 B [T] がある。これらを結びつけるのが構成方程式。
D=εE,B=μH,J=J0+σE
ε は誘電率 [F/m]、μ は透磁率 [H/m]、σ は導電率 [S/m]。J0 は外部から印加された電流密度。
媒質の分類
媒質によって ε、μ、σ の値が変わる。
真空 — ε0=8.854×10−12 F/m、μ0=4π×10−7 H/m、σ=0。全ての基準。
無損失誘電体 — ε=εsε0(εs は比誘電率)、μ=μ0、σ=0。ガラスとかポリエチレンとか。電磁波は減衰せずに伝搬するけど、真空より速度が遅くなり波長が短くなる。
完全導体 — σ=∞。電磁波は内部に侵入できない。
損失を持つ媒質 — σ=0。電界により導電電流 J=σE が流れて、電磁波が運ぶエネルギーが熱(ジュール熱)として消費される。
マクスウェル方程式(微分形)
電磁波の全てを支配する4つの式。
拡張されたアンペアの法則
∇×H=J+∂t∂D
磁界の循環分(回転)は電流密度と電束密度の時間変化の和に等しい。∂D/∂t が変位電流と呼ばれる項で、マクスウェルが付け加えた。これがないと電磁波は存在しない。J は伝導電流。
ファラデーの電磁誘導の法則
∇×E=−∂t∂B
磁束密度の時間変化はその周りに電界を誘導する。マイナス符号はレンツの法則(変化を妨げる方向に誘導される)に対応。
電束密度のガウスの法則
∇⋅D=ρ
ある閉曲面を貫く D の総量は、その閉曲面内の電荷 ρ に等しい。
磁束密度のガウスの法則
∇⋅B=0
磁力線は連続な閉曲線。磁気単極子(モノポール)は存在しない。
真空中の波動方程式
真空中(ε=ε0、μ=μ0、σ=0、ρ=0)で角周波数 ω の電磁波を考える。マクスウェル方程式のフェーザ表示は、
∇×H˙=jωε0E˙,∇×E˙=−jωμ0H˙
∇⋅E˙=0,∇⋅H˙=0
ベクトル公式 ∇×∇×E˙=∇(∇⋅E˙)−∇2E˙ を使って、∇⋅E˙=0 から第1項が消えて、
∇2E˙+ω2ε0μ0E˙=0
k02=ω2ε0μ0 とおくと、
∇2E˙+k02E˙=0
これがヘルムホルツ方程式。真空中の波数は k0=ωε0μ0。
平面波の解
電界が x 成分のみで z 軸正方向に伝搬する平面波 E˙=[E˙x(z),0,0] を考えると、波動方程式は、
dz2d2E˙x+k02E˙x=0
解は E˙x(z)=E˙1e−jk0z+E˙2ejk0z。第1項が +z 方向への進行波、第2項が −z 方向への進行波。片方だけ伝搬する場合は E˙2=0。
磁界はマクスウェル方程式から求めると、
H˙y(z)=η0E˙1e−jk0z
η0=μ0/ε0=120π≈377 [Ω] が真空の波動インピーダンス。
瞬時値表現
フェーザ E˙ から瞬時値への変換は Re[2E˙ejωt]。実効値が E1 のとき、
Ex(z,t)=2E1cos(ωt−k0z)
Hy(z,t)=2η0E1cos(ωt−k0z)
電界と磁界が同位相で、互いに直交し、進行方向とも直交する。
ポインティング電力
電磁波が運ぶ電力密度(エネルギーの流れ)。
P=Re{E˙×H˙∗}=[0,0,Pz]
Pz=η0∣E˙1∣2[W/m2]
無損失誘電体中の電磁波
誘電率 ε=εsε0、透磁率 μ0、導電率 σ=0 の無損失誘電体。マクスウェル方程式は真空の ε0 を εsε0 で置き換えるだけ。
波数は k=k0εs。真空の波数 k0 より大きい。
伝搬速度は v=c/εs。真空の光速 c より遅くなる。
波長は λ=λ0/εs。真空の波長 λ0 より短くなる。
真空と誘電体中で周波数は同じ。変わるのは波長と速度。
損失性媒質
導電率 σ=0 の媒質では、アンペアの法則が変わる。
∇×H˙=σE˙+jωεE˙=jωε(1−jωεσ)E˙
ε を複素誘電率 ε(1−jσ/ωε) で置き換えたと解釈できる。
波数は複素数になって k=ωεμ=β−jα。β は位相定数、α は減衰定数。
電界の解は E˙x(z)=E˙1e−jkz=E˙1e−αze−jβz。e−αz が振幅の指数的減衰を表す。
電磁波が媒質に浸透する目安として表皮の深さ(skin depth)δs が用いられる。
δs=α1=ωμ0σ2
良導体(σ/ωε≫1)だと δs はめちゃくちゃ小さくなって、電磁波はほぼ表面だけを伝わる。これが高周波における表皮効果。←こいつのせいで電磁波工学が嫌いになった。