電流計や電圧計の中身がどうなっているかという話と、交流で「実効値」と呼ばれるものが何なのかという話。どっちもフレミングの左手の法則と積分で片付く。
可動コイル型計器
磁束密度 B の永久磁石の間にコイルを置いて、電流 I を流すとコイルが回転する。フレミングの左手の法則。電流 → 磁場 → 力。
電流 I が流れる長さ b の導体が磁束密度 B の中にあるとき、導体の単位長さあたりにかかる力は、
f=IB[N/m]
(I⊥B のとき。一般には ∣F∣=∣I∣∣B∣sinθ。)
コイルの縦の長さが b なら、片側の導体にかかる力は F=IBb。コイルの横幅が a で、回転軸から導体までの距離が a/2 だから、トルクは、
T=2a⋅F⋅2=aF=aIBb
コイルが n 回巻きなら、
T=nabIB[N⋅m]
このトルクをバネの制動トルク Ts=kθ と釣り合わせる。T=Ts のとき、
nabIB=kθ⟹θ=knabIB
θ∝I。偏転角が電流に比例する。だから目盛りが等間隔になる。これが可動コイル型計器の原理で、アナログ電流計の中身はまさにこれ。
消費電力と実効値
交流回路で「消費電力」を考えるとき、問題になるのは「同じ電力を消費する直流電流はいくらか」。これが実効値(RMS: Root Mean Square)。
正弦波とその実効値(振幅の 1/√2 ≈ 0.707)
抵抗 R に時間変化する電流 i(t) が流れるとき、消費電力の瞬時値は p=i2(t)R。1周期 T にわたる平均電力は、
P=T1∫0Ti2(t)Rdt=R⋅T1∫0Ti2(t)dt
この平均電力が P=I2R と等しくなるような I を実効値と定義する。
I=T1∫0Ti2(t)dt
Root(平方根)of Mean(平均)of Square(二乗)。名前がそのまま定義。
正弦波の実効値
i(t)=Imsinωt のとき、
I2=T1∫0TIm2sin2ωtdt=TIm2∫0T21−cos2ωtdt
cos2ωt の1周期積分はゼロだから、
I2=TIm2⋅2T=2Im2
I=2Im≈0.707Im
家庭のコンセントが「100V」というのは実効値のこと。ピーク電圧は 1002≈141 V。
平均値
実効値とは別に、整流後の平均値も計測で使う。正弦波の正の半周期の平均は、
Iav=T/21∫0T/2Imsinωtdt=π2Im≈0.637Im
全波整流波形、平均値、実効値の比較
実効値と平均値の比を波形率(form factor)と呼ぶ。正弦波なら 2Im/πIm/2=22π≈1.11。可動コイル型計器は平均値に応答するけど、目盛りは実効値で振ってある。正弦波を前提にして波形率1.11で換算してるから、波形が歪むと誤差が出る。
三角波の実効値
正弦波以外のパターンも見ておく。ピーク値 Im の三角波は線形に上がって線形に下がるから、
I=3Im≈0.577Im
波形によって実効値とピーク値の比(クレストファクタ)が変わる。正弦波は 2≈1.414、三角波は 3≈1.732、矩形波は 1。